ブラッドパス 血盟とは?

ブラッドパスとは、【血契】(ちぎり)という儀式を通じて、人間と吸血鬼の間に作られる魂の繋がりです。ブラッドパスは目に見えませんが、人間と吸血鬼の魂を繋ぎ、精氣を共有させるのです。

ブラッドパスを得た人間と吸血鬼――血盟(けつめい)は業血鬼と互角に戦えるようになります。
血盟は、いわば運命共同体となりますが、その関係は決して対等ではありません。それでも強い絆で結ばれる者たちもいれば、あくまでも同じ目的を達成するために互いを利用し合う者たちもいます。

ここからは、ブラッドパスを得る儀式の方法や、その恩恵や制約について解説しましょう。

目次

血契(ちぎり)

血契は、人間と吸血鬼の間にブラッドパスを繋ぎ、魂の一部を共有する儀式です。その起源は判然としませんが、少なくとも八世紀頃には原型が確立され、日本や中国などの一部地域で実践されていたようです。もとは人間が吸血鬼を支配し、使役するための技術であり、世界各地の伝承や説話に残されている〝使い魔〟や〝式神〟、〝御法童子〟などは血契がモデルになったとされています。

血契を交わす手順はいくつかの種類がありますが、もっともオーソドックスな方法は、互いの傷を重ね合わせ、「相手と繋がるイメージ」を思い浮かべながら次の【誓詞】(せいし)を唱えることです。 

紅き血は死銭の銀貨
縁を糾う金の糸

我は星を弑す者
汝は人を殺す者

死が二人を別つまで、
刃となり、盾となり、楔となり、七天を滅さん

血の軛こそ、我らが宿命

そして吸血鬼から人間にひとつ約束を要求し、人間がそれを受諾することで【血契】は成立します。
なお、血契という儀式の存在と方法を知っているのは、基本的に対鬼組織だけであり、一般人は知りません。ただし、旧家には伝承として伝わっていることがあり、吸血鬼側も古い家柄の貴種であれば知っています。

重痕者(じゅうこんしゃ)

ひとりの人間が血契を結べる吸血鬼の数は基本的にひとりですが、重痕者と呼ばれる、複数の吸血鬼と血契を結べる特別な体質と才能の持ち主も少数ですが存在します。

血盟(けつめい)

血契を通じてブラッドパスを得た人間と吸血鬼を血盟と呼びます。
吸血鬼と人間を互いにパートナーと呼び、同じ人間(重痕者)と血契を結んだ鬼を【連血鬼】(れんけつき)と呼びます。

痕印(こんいん)

血盟となった者には、体に【痕印】と呼ばれる黒い痣のような紋様が浮かび上がります。
これは、パートナーが自分に抱く感情や想いの表れであり、内容によって印の位置や形状が異なります。感情が大きく変わると位置や場所が変わることもあります。

ブラッドパスの消失

ブラッドパスの消失条件は、「パートナーのどちらかが死亡すること」です。逆に言えば、この条件以外でブラッドパスが消失することはありません。一度ブラッドパスが結ばれれば、その関係はまさに「死がふたりを分かつまで」続くのです。なお、パートナーが死亡しても、遺された側の痕印は消えません。

ブラッドパスの強化

血契を交わした人間と吸血鬼の間には魂の繋がりが生まれ、互いの 〝精氣〟を共有・循環できるようになります。ブラッドパスは目で見えるものではありませんが、血契を結んだ者同士は〝繋がっている〟という不思議な実感があるようです。

また、血盟が交流を深め、互いを意識することで、ブラッドパスはより強固になります。これをブラッドパスの強度上昇と呼びます。強度が上昇するほど血盟はより多くの〝精氣〟を共有できるようになり、強大な力である血威も使えるようになります。ただし、強度の上昇はあまり長くは保てず、しばらく時間が経てば元に戻ってしまいます。

ブラッドパスの効力

ブラッドパスにより、血盟には次の恩恵と制約が与えられます。

血戒の無効化(共通)

業血鬼が持つ恐るべき【血戒】は、その影響下に入った人間や吸血鬼を無力化してしまいます。しかし、血盟者は例外的に血戒内でも自由に動くことが可能です。その詳細な原理はまだ判明していませんが、ブラッドパスによって精氣を共有していることが原因ではないかと推察されています。

血威の使用(共通)

血威とは、自分の裡にある精氣を活性化させることで発現する強大な力です。ブラッドパスを得た上で、その強度が上がった血盟のみ、血威を使うことができます。防御不能の攻撃を繰り出したり、血盟の精氣を活性化させたりと、超常的な現象を引き起こします。

基本的に個人の精神(あるいは魂)の在り方に依存するため発現方法は人それぞれですが、人間なら核となる信念や培ってきた技術、吸血鬼であれば鬼としての起源と得意とする戦法などで、ある程度は傾向が絞られてくるようです。

人間の恩恵

吸血鬼と血契を交わした人間は、まず身体能力や感覚が強化されます。吸血鬼と対等とまではいきませんが、高い腕力や跳躍力を得たり、わずかな光で暗闇を見通せるようになったりと、普通の人間よりも優れた能力を得られるのです。病気で立ち上がることのできなかった者が、血契を交わしたことで活発に動けるようになった、という事例もあります。

人間の制約

血契は人間にとってのデメリットも存在します。そのひとつが、血契の際に吸血鬼と交わした〝約束〟を必ず守らなければならない、ということです。約束を破った場合、人間は心臓を貫かれるような強い痛みに苦しむことになります(約束を履行するか、数時間経つと回復します)。

また、吸血鬼は血契を交わした人間の血しか飲めなくなるため、自身の血を提供する必要もあります。ただし、パートナーの吸血によって吸血鬼化することはなく、リスクは「やや貧血気味になる可能性がある」という程度です。しかし、吸血鬼にトラウマがあったり、吸血鬼を憎んでいたりする人間にとって、〝血を吸われる〟ことは精神的な苦痛を伴う行為であることも確かです。

そして、もっとも大きなデメリットが感情や記憶、あるいは感覚の一部を〝喪失〟することです。ブラッドパスを結ぶと人間の魂は少しだけ吸血鬼に近づきます。その過程で、感情や記憶の一部を喪失します。たとえば怒りを覚えなくなったり、仲間が死んでも悲しくなかったり、大切な人の顔が塗りつぶされたように思い出せなくなったり、といった事例が報告されています。感情や記憶の希薄化により、これまで親しかった人間や家族とコミュニケーションがとれなくなったり、「自分が人間ではなくなった」という念に苛まれ心を病んでしまう者もいます。

吸血鬼の恩恵

人間と血契を結んだ吸血鬼は、弱点を克服できます。たとえば日光に当たっても身体が燃え上がることはなくなり、宗教施設や聖域にも入れるようになります。もっとも、どの程度克服できるかは吸血鬼ごとに異なり、完全に克服する者から、気持ちが悪くなる者や、忌避感を拭えない者もいます。

そして第二の恩恵は身分の保証です。人間の対鬼組織では「人間と血契を結んだ吸血鬼は攻撃の対象としない」という不文律が存在します。そのため、制限つきながらも自由を得て安全な生活を送ることができる、というのは(特に夜者や半鬼にとっては)とても重要な恩恵となります。

人間との約束

吸血鬼は【血契】を交わす際に、人間にひとつ約束を求めることができます。約束の内容は吸血鬼が好きに決めることができますが、「自殺しろ」や「誰かを殺せ」といった命に関することは指定できません。

そのため、多くの吸血鬼は「血を吸う時は必ず首から吸わせろ」や「自分(吸血鬼)のことは様をつけて呼べ」など、人間への意趣返しのような内容を指定することが多いようです。

吸血鬼の制約

吸血鬼の制血契を交わした吸血鬼は、パートナー以外の人間から血を吸うことができなくなります。もしパートナー以外から吸血を行なった場合、身体中の血管が焼けつくような痛みに苛まれ、以後数日は体調不良が続きます。

そして吸血鬼は血盟(パートナーや連血鬼)を殺すことができません。殺意を抱いて殺害行動を起こすと、喉が締め付けられるような痛みに襲われ、動くことができなくなります。

また対鬼組織の人間と血契を結んだ吸血鬼は、基本的に組織の監視下に入ります。人間側の上告や具申によって多少の自由は得られますが、対鬼組織がその気になれば、簡単に処分されてしまう立場にあるのです。

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