キズナバレットⅢ世界設定 テンシ編

このページは『キズナバレットⅢ テンシたちの終末』電子書籍版が発売されるまでの、期間限定ページです。

目次

テンシ

テンシとは“福音”に完全適応した存在です。その力はキセキ使いの比ではなく、普通のバレットではかすり傷ひとつ負わせることができません。現在、テンシたちは人間社会の裏側で暗躍しています。世界で起きているさまざまな事件や争いの裏側には、テンシたちが少なからず関わっている、という噂もあります。そのためSIDをはじめとする多くの組織はテンシを危険視し、排除する方法を模索しています。
ここからはテンシについて、このページで解説します。

完全なる存在

テンシはナノマシン“福音”に適応し、その力を完全に引き出すことが出来る存在です。その肉体は余すところなく“福音”に置き換わっていて、怪我や病気とは無縁です。また、キセキ使いと違って、肉体を維持するために“福音汚染”を行う必要がありません。まさに不老不死を体現しています。
テンシの外見は、普通の人間とあまり変わりません。聖字教の宗教画に描かれる“天使”には頭上の光輪や背中の翼といった特徴があります。しかし、テンシにそういった特徴はありません。その代わり、“福音”の出力を上げると髪や眼が銀色に変わる、という共通点があります。
睡眠や食事は必要ありませんが、趣味として嗜む者がいます。性行為は可能ですが、子どもは作れません。

外見の変化

テンシは自分の外見を変えることができます。変化の度合いはテンシによって異なります。なぜなら、変化後のイメージを明確に思い描く必要があるからです。まったく違う姿形になるイメージを具体的に描けるかどうかは、テンシ個人の素質に左右されますです。変化が得意なテンシはまったくの別人や、動物の姿になることが可能です。体の大きさも自由に変えられるため、猫や犬の姿で生活をしているテンシもいます。
逆に、自分の姿に対するイメージが強固すぎるテンシは、外見を大きく変えることができません。たとえば、テンシになる前の姿や、若い頃の姿、逆に大人になった姿などを“理想”としている場合、そこから外見を大きく変えることはできません。
また、大きな傷や痣など体の一部にコンプレックスを抱えている場合、どれだけ変化してもその特徴だけ残ることがあります。テンシになる前の傷がずっと残っている樺根真のように、強い記憶とセットになった傷が残ったり、自己嫌悪や自己否定といった感情が外見に影響するテンシもいます。

異形の精神

テンシたちの思考や精神は、常人と大きくかけ離れています。といっても、“福音”によって彼らの思考が歪められたわけではありません。
“福音”は人間の精神に強く反応して力を発揮します。テンシたちは、もともとそう“成る”に相応しい精神を有しているのです。
完全なる肉体という“殻”を得たことで、その精神はさらに先鋭化し、常人では理解が及ばない独自の哲学や価値観を持つ者も少なくありません。

テンシの欲望

キセキ使いと同じく、テンシも自分の欲望を満たすために行動します。しかし、彼らの行動による被害は、キセキ使いとは比べものにならない規模になります。なぜなら、テンシは興味や欲望を充足させる過程で新たなキセキ使いを作るからです。キセキ使いはさらに自分のために多くの事件を起こし、被害者の数は加速度的に増えていきます。
テンシのなかにはキセキ使いに指示を出し、自分の計画の駒として使う者もいます。無関係に見える複数の事件の背後に、実はテンシの思惑が働いていた……ということも珍しくはありません。

コミュニケーション

普通の人間には理解できない思考や精神性を持つテンシですが、会話することはできます。また、接触した相手を殺すとは限りません。なかにはプロフェータ(『第2巻』P136)のように、人間と商売すらしている者もいます。
人間の組織は、時としてテンシと取引したり、協力を要請することがあります。それが上手くいくかどうかは、すべてテンシの気分次第です。彼らは他者に友好的なわけではありません。自分の部屋に迷いこんできた虫を観察するように、あるいは道ばたの野草に目を向けるように、あくまで「気が向いたから友好的に接している」だけです。

福音汚染

テンシは生存のために“福音汚染”を行いません。しかし、「騒々しいから」と町ひとつの住人を消したり、「面白そうだから」と人間を生きたまま分解・接合したり、まるで子どもの悪戯のような感覚で人間を害します。テンシたちがとんでもない“気まぐれ”を起こせば、あっという間に現在の世界は壊れてしまうでしょう。SIDをはじめとする各組織は、そうなる前にテンシを残らず狩り殺そうとしています。

テンシの能力

テンシはキセキ使いと同様に、“福音”によるキセキを起こします。しかし、その精度・速度・規模・実現可能な事象の多様さは、キセキ使いより格段に上です。テンシが起こすキセキは、局地的に空間や時間すら操作でき、相手を空間ごと切り裂く斬撃や、力学操作による物理攻撃の無効化などを自在に行うため、普通のバレットでは戦いすら成り立ちません。

完全なる肉体

テンシの肉体強度はキセキ使いより格段に高く、バレットの攻撃でも致命傷を与えることが困難です。キズナの消耗を度外視し、“リベル”による攻撃強化を重ねて、ようやく殺傷が可能です。しかし、その場合はテンシを殺しきるより先に、バレットのキズナが完全に壊れきってしまうでしょう。

テンシ戦

強大な力を持つテンシを、いかにして排除するか。これは各組織が抱える大きな課題です。
SIDや聖伐騎士団のように社会秩序を守る組織だけでなく、白獅子組や沌竜会のように利益を最優先とする組織も、テンシと敵対した際に備えて対抗手段を求めています。

対抗手段の模索

残念ながら、テンシとの交戦記録はあまり多くありません。なぜなら、テンシと戦って生還した者が極端に少ないからです。遠距離に観測機器を置いても、大抵はテンシに見つかって破壊されるため、テンシ戦のデータの収集はとても困難です。
そのため、テンシ戦装備の開発は、エリカ・フォン・ヴィンター博士と丹和琴葉博士が残した仮説をもとに、キセキ使いとの戦いのノウハウを加えて進められてきました。
約1年前に、ヨーロッパの研究機関がテンシ戦を想定したハーネスとリードを試作。これを世界中の組織に提供したことが、テンシ戦への足がかりとなりました。日本でも試作品の実戦投入だけでなく、独自の装備の開発が進んでいます。
テンシ戦の勝率は、全体で見れば決して高くはありません。しかし、幾多の屍を踏み越えて、人類は少しずつテンシに迫っています。

対テンシ装備

テンシへの対抗手段は、おもに2つのアプローチが存在します。

1つは、テンシの力を弱めて通常のバレットでも対抗可能にすること。こちらは高励起状態の“リベル”の散布や、“リベル”を封入した弾頭を撃ち込むなどの方法が提案されていますが、まだシミュレーションを重ねている段階です。実用には至っていません。

もう1つは、特殊な装置でバレットの能力を極限まで高め、一時的にテンシに対抗可能な戦闘力を得させること。こちらは試作品が完成しており、すでに実戦投入が始まっています。
最初に開発された装置は、対テンシ用ハーネス“フェンリル”と対テンシ用リード“グレイプニル”。これは、エリカ博士の仮説をもとに、世界中から集めた対キセキ使い戦のデータや、ベルドラント機関や夏蓮理学研究所(共に『第2巻』P101)が残した研究成果を組み合わせて作りだされた装備です。テンシ戦で一定の成果をあげており、日本でもSIDのバレットがテンシの撃破に成功した事例があります。
ただし、この装備はキズナの消耗がとても激しく、たとえテンシに勝利しても“晶滅”や“残響体”化の危険が伴います。バレットをただ消費しては、テンシ戦のノウハウが蓄積しません。そこで、少しでもバレット(とくにハウンド)の稼働時間を延ばすため、改良型の装備が開発されています。
日本で開発された装備は、対テンシ用ハーネス“オロチ”と対テンシ用リード“クサナギ”。攻撃力を重視した短期決戦型であり、防御はバレット本来の能力や戦術に頼ります。
中国で開発された対テンシ用増強剤“シユウ”は、体内に注射することでリベルを活性化させる薬です。身体能力や再生力を上げることで継続的な戦闘を可能にします。
これらの装備は、開発した企業や組織と協力関係にあれば、データの共有を条件に引き渡しされます。協力関係にない場合は、何らかの取引が必要となります。例外的にバベル商団(『第2巻』P96)が保有していることもありますが、入手経路は謎に包まれています。

テンシを殺す獣

“リベル”研究の初期段階において、“獣計画”と呼ばれる対テンシ用の兵器開発が進められていました。「“リベル”に完全適合した人間を造りだし、テンシを打倒する」ための計画でしたが、研究主任であるエリカ・フォン・ヴィンター博士が研究の凍結を主張。「暴走の可能性が高く、“リベル”の影響が人体に留まらず広範囲に及ぶ」という博士の提言が企業に認められ、研究は凍結されました。
“獣計画”で得られたデータは、後のハウンド製造に大きく役立っており、テンシ戦装備にも応用されています。何人かの研究者が“獣計画”の再開を要請していますが、今のところ再開の見込みはありません。しかし、テンシ戦装備が大きな成果を出せなければ、いつかテンシを殺す“獣”が産声をあげるかもしれません。

テンシたちの関係

テンシたちが持つ個人的な目的や動機は、基本的に相容れないものです。そのため、複数のテンシが組織を作って互いを支え合うことはありません。短期的に利用し合うことはあっても、相手が邪魔になれば簡単に切り捨てます。あるいは、合理性が一切なくても気まぐれに相手を裏切ったり、逆に理由もなく助けたりもします。
テンシたちが対立した場合、実力行使で決着をつけることがあります。ただし、相手がテンシである以上、勝利した方も著しく消耗します。その隙を突かれて殺される可能性があるため、最近はゴスペルバレットを使った代理決闘が好まれています。

一方で、互いを監視しつつも緩やかな交友(に見える)関係を築いているテンシたちもいます。たとえばプロフェータ(『第2巻』P136)が主催する“終末茶会”という集まりには、フロエ(P88)やリオ(P89)などが参加しており、情報の交換や遊戯などを楽しんでいます。彼らは薄っぺらい笑みを浮かべつつ、互いの状況や力量を測り、いざという時に相手をすぐ排除できるよう計略を張り巡らせています。

終末

テンシたちは、よく“終末”という言葉を口にします。
それが意味することは曖昧で、テンシによって微妙にニュアンスも異なります。たとえば樺根真は「世界がまっさらになること」で、フロエは「世界中の人が自分を愛してくれること」という意味で“終末”を使っています。リオは「予測もつかない出来事が次々と起こること」、モルガーナにいたっては、具体的な事象ではなく「世界が満開になる瞬間」だと語ります。

彼らの口ぶりから推察するに、“終末”とは「世界のすべてが自分の思い通りにいった状況」を示すようです。上に挙げた者だけでなく、あらゆるテンシが“終末”を望み、それを実現させるために行動しているのでしょう。
それは人間にとって、もはや覆しようのない“行き止まり”です。いかなる条件を満たすと“終末”が到来するのか? それはテンシごとに違うのか? あるいは共通しているのか?
答えはまだ、誰にもわかりません。

テンシたち

特に強力と目されている4人のテンシを紹介します。

フロエ

妹でも弟でも娘でも息子でも恋人でも友だちでもいいよ。
ね、だからあなたもフロエを愛して? フロエをほしがって?

性別:フロエ  年齢:ないしょ
ネガイ:享楽  ケンノウ:侵愛
一人称:フロエ  二人称:あなた
好きなもの:フロエを好きな人、かわいいもの
嫌いなもの:フロエを嫌いな人、みにくいもの

“享愛のテンシ”の異名を持つ子ども。他人の精神に干渉し、自分を“愛”する家族や親友だと思い込ませることができます。そして、自分を巡って争うように仕向け、人間関係が破綻していく様子を楽しみます。標的は気分次第で決め、家庭や学級などの小さく密度の高い集団を壊すこともあれば、1つの組織や社会を破壊することもあります。
外見は10代前半ですが、その実年齢や性別は不明です。自分からは見せたがりませんが、直接的な戦闘力も高く、小国の軍隊を一瞬で塵にした記録が残されています。

リオ

むむむ、小生思いつきましたぞ!
次はこんなふうに遊ぶのはどうでしょうかな?

性別:男性  年齢:忘れましたぞ!
ネガイ:究明  ケンノウ:創製
一人称:小生  二人称:貴殿
好きなもの:刺激、炭酸飲料、予想外の結末
嫌いなもの:退屈、常識、予想どおりの結果

“退屈のテンシ”の異名を持つ少年。退屈を何よりも嫌い、常に刺激的な出来事や、自分の想像を超える体験を探しています。
誘拐してきた人間たちに命がけの脱出ゲームをさせたり、深い愛情で結ばれた夫婦を“ひとつ”にして反応を確かめたり、ある国の代表を洗脳して戦争を仕掛けさせてみたり、“実験”の規模はその時のノリで変わります。
常に鳥の頭のようなマスクを被っています。炭酸飲料を好みますが、気がつけば缶が空になっていて、飲む瞬間を見た者は誰もいません。

樺根 真(かばね まこと)

なにもかもがくだらねぇ。イライラするぜ。
全部……この世のすべてをブッ壊さなきゃ気が済まねぇんだよ

性別:男性  年齢:20代後半
ネガイ:破壊  ケンノウ:詩滅
一人称:俺  二人称:お前
好きなもの:そんなモンはねえ
嫌いなもの:あらゆるモンすべてだ

“破滅のテンシ”の異名を持つ男。この世界のあらゆる物を憎み、破壊しようとしています。かつての樺根真は、世界中の戦場に赴いて民間人を助ける名医でした。しかし、その名声を妬んだ後輩に陥れられ、テロリストの支援者として凄惨な拷問を受けました。死に瀕した彼は、“福音”を与えられ、世界を憎むテンシとして覚醒したのです。
体中に拷問の傷跡があり、感情が高ぶると血が滲んで蛆が湧き出ます。蛆は瞬く間に蠅の大群に成長し、その銀色の羽であらゆるものを削り滅ぼします。

モルガーナ

とびきり素敵な終末を待っているの。
貴方、せっかくだからお茶の相手をしてくれないかしら?

性別:女性  年齢:不明
ネガイ:無垢  ケンノウ:空飾
一人称:私  二人称:貴方
好きなもの:静かな時間、紅茶、終わり
嫌いなもの:うるさい場所、終わりのない物語

“終末のテンシ”の異名を持つ女性。テンシとしては珍しく、能動的に大事件を起こすことがない存在です。ただし、世界でもっとも多くのキセキ使いやテンシを生み出している人物であり、間接的に最大の被害をもたらしていると言えます。「素敵な終末を見たい」と語っており、その手段として配下を作り出しています。ただし、彼女のいう“終末”がいかなる事象を指すのかは不明です。
頭は普通の人間ですが、首から下は豪奢な衣服を着た白骨です。彼女が飲んだ紅茶がどこに消えているのかは、誰にもわかりません。

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